施工例
熊谷市 工事期間を3期に分けた葺き替え
東日本大震災で被害を受けた屋根の葺き替えです
今回の東日本大震災で棟に被害を受けられ、当初は棟の積み替え工事を検討されていました。しかしながら、施主様から屋根全体の状態を鑑みて葺き替え工事に変更する旨のご回答をいただき、葺き替え着工の運びとなりました。
新築時以来の葺き替えで屋根が一新され、装いも新たにリニューアルです。
ご主人様の定年時期に合わせて
葺き替えをご決断されました
お仕事を引退後もこれで安心です
熊谷市 S様邸
高度成長期に新築されたお住まいから3人の息子さんが巣立たれました。
息子さんたちがお帰りになった際にも喜んでいただけると思います。
工事期間中の天候不順に備えて、3期に分けて工事しました
工事の時期は雨が少ない秋でしたが、天候が急変する事態に備えて工事の時期を3期に分けて行いました。
まず、2階の屋根を手掛け、工事か完了してから1階北側の屋根を、そして一番最後に1階南側の玄関横の屋根を葺き替えました。本来、すべての古い瓦を一度に下ろして工事すれば効率は良くなりますが、瓦を葺き終わっていない屋根は常に雨漏りの危険にさらされることになります。
そこで、安全を期して1つの屋根を葺き終えてから次の屋根の古い瓦を下ろす工事計画を採用しています。
第1期工事
1階の屋根を先に工事してしまうと、2階の屋根を工事する時に物が落下した場合、工事が完了した1階の屋根の瓦を破損させる可能性があります。そこで、通常は2階の屋根の工事を先行して行います。
棟に使う瓦も現代的に節のないあっさりした瓦を使用しています。
現代の製品は経年変化による変色がほとんどありません
第2期工事
1階北側の屋根は隣家との距離が近いため、瓦などの資材を上げ下ろしするための昇降機がかけられません。
そのため隣接するスペースにトラックを横付けして手渡しで古い瓦をおろし、屋根を掃除してから資材を運び上げる作業が必要になりました。
ゴミが下地材の下に入り込むと、下地材に穴を開ける原因になるので掃除が大事です。
第3期工事
最後に1階南側の屋根に取り掛かりました。写真のように、まず棟の部分を撤去した後、桟瓦を下ろしてゆきます。
古い棟を撤去する際には泥を処分することが必要になりますが、この段階で大半の泥は下ろし終わります。
燻し瓦は別名「銀色」とも呼ばれ、独特の光沢があります
使用した下地材も最高級です
矢印の根本部分にある隙間から雨水が下方向に排水されるため、この下地材だけで雨漏りしません
さらに、万が一に備えて屋根の下地材も工事中に穴が開く危険が最も少ない最高級素材を使用しましたので、施主様にも安心して工事に臨んでいただくことができました。
瓦を屋根の上に置いてしまうと養生シートを掛けても雨漏りを防ぐことができません。なぜなら、瓦を置いてないところに雨水がたまってしまい、その水がシートの隙間から屋根の裏側に浸透してしまうからです。この場合、低いところに多量の雨水が溜まってしまうことから、部分的には養生シートを掛けない場合よりも雨漏りの程度が悪化してしまいます。
そこで、高級下地材を用いて不意の天候不順に備えています。
現在の下地材の主流はゴムアスファルト系の素材です。この下地材も耐久性に優れた素材ですが、気温の上がる時期には柔らかくなり破れやすくなる傾向があるようです。
そこで、今回の工事では秋口ですが気温が比較的高い日が続くことが予想されましたので「軟質弾性プラスチック素材」の製品を使用しました。
通常の下地材の3倍以上の強度があるため故意に穴を開けようとしない限り破れることはありません。
加えてプラスチック製であるため、復元力が強く元に戻ろうとする性質が強く釘穴をふさぐ作用があるため雨漏りしにくい性質があります。
最近は様々な下地材が製品化されていますので、用途に合わせて選択することができるようになっています。
お客様より
親戚の紹介でお世話になりました。きっかけは東日本大震災で棟の一部に被害を受けたことです。
実際に検討してみると、これまでにアンテナの交換などで瓦があちこち破損してしまったり、瓦の表面が剥がれてきたりしていたため、今後のことも踏まえて葺き替えていただくことにいたしました。
ただ、現在も住んでいる母屋を葺き替えるため工事期間中に雨が降らないかということが心配でしたが、工事期間を3つに分けていただいたり、下地材に良いものを使っていただいたりと様々な配慮をしていただいたことに感謝しております。
私たちは3人の子供がすでに巣立っており、これからは主人の定年後は両親と4人の生活になりますが、今後は屋根の心配をしなくて済むことにほっとしています。定年前に葺き替えていただき安心を買うことができたのはタイミング的にもよかったかなと思います。
最後になりますが、仕事の内容には本当に満足しております。丁寧なお仕事をしていただき、ありがとうございました。
担当者より
S様、今回は大変お世話になり、ありがとうございました。
工事着工前は現在もお住まいの家を葺き替えるということで、工事の進め方を綿密に検討いたしましたが、幸いにも天候に恵まれて瓦を葺き終えていない状態での降雨はありませんでしたので、ほっとしております。
今回使用いたしました下地材は通常では使用することは稀ですが、瓦が葺いてない状態でも雨漏りすることがないものであるため、状況を判断しておすすめさせていただきました。
古い瓦屋泥を下ろし終わってみると、若干下地が傷んでいるところもあったため、本当に良い時期にご決断されたと思います。
我が家も工事以来30年、全く修理はせずに問題ありませんので、修理でお邪魔することはないかと思いますが、近くまで行ったときには伺わせていただきたいと思います。今回はいろいろとご配慮いただきありがとうございました。
今回の葺き替え工事のポイント
お客様はこの様なご要望をお持ちでした
リフォームの経緯
- 東日本大震災の時に棟の一部が被害を受けました。
- 当初は棟の積み替えの予定でしたが、屋根が傷んでいた部分があったために、思い切って葺き替える決断をされました。
1丈夫な棟にしてほしい
大きな被害をもたらした東日本大震災でしたが、今後大きな被害をもたらす地震の到来が予想されています。そこで、今後の地震に備えて棟の強度を高くしてほしい、とのご要望でした。
2耐久性の高い製品を使ってほしい
最近、瓦の表面が剥がれ落ちていることを見かけるようになったこと、アンテナの交換などで屋根の上に乗った時に瓦が割れたりすることなどから、「丈夫な瓦を」とのことでした。
以上のお客様のご要望を受けての今回の工事のポイントです。ご要望を色分けし、その色に対応した工事のポイントになっています。
東日本大震災クラスの地震にも対応。細かな対策の積み重ねで丈夫な棟に仕上がりました。
棟の内部で「のし瓦」を固定します
お客様のお住まいが新築された当時は、震災に対する認識が現在ほど切迫したものではなく、昔ながらの工法が一般的でした。現在では利用できる建築資材が豊富になり、工法自体が進化しています。
左の写真では棟の一番下の部分の施工状況を撮影していますが、向かい合う「のし瓦」を針金で緊結し、隣り合う「のし瓦」はシリコンで張り合わせています。こうすることで、棟の土台をなす一番下の段は実質一体化することになって動くことがありません。
通常は、この段のみで十分ですが今回はさらにその上の段についても針金で緊結する手段をとっています。
隣り合う棟同士が支えあいます
今回の東日本大震災で、これまで私たちが工事させていただいたお住まいはほとんど被害を受けることがありませんでした。
その要因のうちの一つとして、寄棟の屋根では、水平な棟である「大棟」が勾配がついている「隅棟」を包み込むように施工していることも要因の一つであったようにもいます。
通常は隅棟の上端部は大棟の手前で切断してしまい、漆喰で隙間を埋めているだけで、棟同士は完全に独立した存在ですが、大棟で隅棟を包み込むことによって棟同士がお互いを支えあう働きをします。
三州瓦の焼成温度は1130度。曲げ破壊荷重テストではJIS規格の1.5倍以上の強度があります
焼成温度が高いために高い強度が発揮されます
アンテナの交換等で屋根に上がると瓦が割れてしまった、ということをよく耳にします。これは30年くらい前までは瓦を焼く窯が現在ほどの性能がなく、窯の中で焼ムラがあったことが原因です。現在ではトンネル窯で一様に焼成することが可能ですので、昔のように焼があまく乗っただけで割れてしまうという現象は起きません。
土質の改良により高温で焼成してもねじれなどの減少が起きにくくなっているので、焼成温度を高くすることが可能になりました。
凍害が発生することもありません
しかも焼成温度が1,130度という高温ですから凍害を起こすこともありません。凍害は焼があまい時に水分が瓦の中に入り込み、その水分が凍結、融解を繰り返すことで瓦が表面から剥がれて行ってしまう現象です。
現在の製品は厳格に温度管理されているため、凍害の発生は100%ないと断言することができます。