施工例
熊谷市 棟換気システムを取り入れた屋根
施主様から直接ご依頼いただきました
棟換気システムを採用して、
小屋裏の換気にも配慮
冷房効率の向上で家計にも優しく
熊谷市 I様邸
震災以降、電力需給の関係で住宅の使用電力量が注目されるようになり
ました。棟換気システムは冷房効率の向上に大変役立ちます。
通常、住宅を新築する場合は工務店なりハウスメーカーに工事を依頼すると、受注した工務店またはハウスメーカーが全ての作業工程に携わる工事業者を手配します。ですが、施主様の知り合いに特定の作業工程の工事業者が存在する場合はその工事業者を指名することが可能です。
今回の工事では施主様が当社職員とお付き合いがあり、私たちをよく御存じであったため、工事の受注元は普段はお取引のないビルダーの会社様でしたが、施主様から工事のご依頼をいただきました。
棟換気システムは小屋裏から熱気を排出します
最近の温暖化の影響もあって、日本の夏は大変過ごしにくい季節になってしまいました。私たちが生活する熊谷地方は連日、猛暑日を記録することが少なくありません。当然のことながら、屋根材が太陽の日差しを受けて小屋裏(屋根裏)も気温がぐんぐん上昇し始めます。
左の写真は三州瓦CA研究所から発行された「健康住宅づくりと瓦の評価」(福岡大学工学部建築学科 須貝高教授の実験結果に基づきます)という冊子の写真です。
特に、最近の住宅でよく用いられるスレート板(コロニアル、カラーベストとも言います)の場合は小屋裏の温度が50度を越えることも珍しくありません。瓦の場合はスレート板よりも5度以上は低い数値になりますが、それでも40度を超えることも稀ではありません。
棟換気システムは小屋裏の熱気を外気に放出するため小屋裏の温度低減に効果があり、ひいては室内の温度も下げることが可能です。
工事中の雨天に備えて良質の下地材を使用しました
最近のお住まいは昔と比べて床材も厚く丈夫な床下地材が使用されています。最近は1寸(30mm)の部材が使用され、床を踏んだくらいではびくともしません。
ですが、1つだけ弱点があります。水に濡れた部分が膨らんでしまうことがあることです。
厚さ30mmの床板下地は、写真のように何枚もの薄くスライスした板を接着剤で張り合わせることで一枚の板に加工してあります。この部材自体には耐水性がないため、雨に濡れると膨らんだ部分ができてしまう場合があります。
そのため、最近の住宅は屋根に雨漏りしにくい下地材を使うとともに、壁などの外部を早めに防水シートで覆うことで床板下地が雨に濡れることを防止しています。
そこで、今回は屋根下地材の工事からの工事受注となったため、工事期間中の雨天に備えて雨漏りしにくい屋根下地材を使用しました。
この屋根下地材の特徴を2点挙げたいと思います。
- この下地材は、縦に2mmほどの高さの突起が設けられているため、突起の両端では瓦桟と下地材の間に隙間が生じます。ですから、雨水が瓦桟の棟側に溜まることなく、軒先まで排水されます(写真データ参照)。
- また、釘穴からは雨水が下地材の下に侵入しやすくなるのが普通ですが、軟質プラスチックを原料としていますので破れにくく、しかも、元に戻ろうとする反発力が生じますので釘穴をふさぐ性質があり、雨水の侵入を防ぎます(イラストデータ参照)。
今回の屋根工事のポイント
お客様はこの様なご要望をお持ちでした
工事をご依頼いただいた経緯
- 施主様のお父様が当社の仕事内容についてよく御存じでした。
- お住まいを新築なさるにあたって、屋根工事では工事精度での安心感をお求めになりました。
- 施主様が工事を発注されたビルダー様はこれまでお取引がございませんでしたが、施主様からのご依頼で私たちが屋根工事を任せていただけることとなりました。
130年後も安心して生活できる屋根にしてほしい
昨今の住宅事情は低価格化路線が主流です。ともすればスピードこそ命、という傾向がありますが、こういう時代だからこそ仕事に対するこだわりを持った業者に仕事を任せたい、というお客様がおいでになります。
これまでの私たちの仕事をよく御存じで、ずっと安心できる屋根に仕上げてほしい、とお望みでした。
2棟換気システムを採用してほしい
建築基準法との絡みで、軒裏の換気口だけでは対応しきれないため、棟換気システムを採用したい、とのお望みでした。
棟換気システムは高温になりがちな夏場の屋根裏の熱気をも屋外に排出するするだけでなく、ともすれば多湿になりがちな冬場の屋根裏に集まった湿気を屋外に排出する、とても便利なアイテムです。
以上のお客様のご要望を受けての今回の工事のポイントです。ご要望を色分けし、工事のポイントを記事にしています。
今回のポイントは、すべて基本的なことにこだわった内容です。地味ですが、当たり前のことを当たり前にやることが基本に忠実な仕事になるのだと思っています。
一生に一度の新築工事。最大辺の気配りで、丈夫できれいな屋根に仕上がりました
瓦桟の釘止めは、すべて垂木部分で行っています
瓦桟の長さは通常3,650mmで、屋根の横幅よりも短かく、必ず瓦桟を継ぐ場所が出てきます。
写真データが工事写真、イラストデータが該当箇所の断面図です。
瓦桟の継ぎ目が垂木の上に来るとは限らないため、垂木部分で継ぐことにこだわると瓦桟を垂木部分で切断する手間がかかり、作業効率の点からはマイナスになります。
ただし、長い目で見れば垂木の上で継いだ方が丈夫なのは明らかです。
瓦桟の端部に釘打ちすると割れる場合があるので、斜めに釘打ちすることで釘の打ち込み部分を瓦桟の端部から遠ざけています。
半端の瓦は金具で固定します
屋根の大きさはお住まいによって違うので、瓦は屋根によって大きさを調整するケースが出てきます。
瓦の長さを調整するために切断する場合がありますが、この場合は瓦を瓦桟に固定することができずに不安定になるため、何らかの形で瓦を固定することが必要になります。
そこで、私たちは金具で半端の瓦を固定しています。
「引っ掛け」についての説明
大きい方の写真では、桟瓦と長さを調整するために切断した桟瓦(左)と切断前の桟瓦(右)が撮影されています。
通常、瓦は瓦桟に固定されています。その時に右の小さい方の写真の中で拡大され、オレンジ色で囲まれている突起が大きな役割を果たしています。
この突起を「引っ掛け」と言い、瓦を瓦桟に固定する重要な働きをします。
明治時代までこの「引っ掛け」はありませんでしたが、関東大震災の時の教訓を活かして、それ以降瓦の耐震性を向上させるために実用化されました。現代では特殊な瓦を除いて、ほとんどの製品についています。
平板瓦の課題を補っています
日本瓦のように凹凸がはっきりしている瓦は、雨水を棟から軒先方向にまっすぐ排水します。ところが平板瓦は凹凸がはっきりしていないため、強風を伴う場合には雨水が横方向にも走る可能性があります。
そこで、平板瓦のこの性質を解決することが必要になります。
解決策
1.シーラーを設置する
シーラーは瓦の形に添って柔軟に曲がるようにスポンジ状になっています。そしてこの素材で、横に走った雨水が瓦の外に回ってしまうことを防いでいます。
通常はシーラーと次に説明する水切りの対策で十分ですが、スポンジ状のシーラーの排水性能を一層向上させる為に、シーラーの表面にシリコン処理を施していますので、シーラーの性能だけでも雨水が瓦の外に走ることはありません。
2.水切りを設置する
表面にシリコン処理を施したシーラーを設置することで瓦の外に雨水が回ってしまうことはあり得ませんが、仮にそのようなケースが生じた場合でも屋根端部に設置した水切りで雨水を受け止めることができます。
このように2重、3重の対策を講じています。
過酷な環境になりがちな夏季の小屋裏の熱気と、冬季の小屋裏の湿気を排出します。棟換気システムは縁の下の力持ちです
最近の夏場の気温は連日、猛暑日ということが珍しくありません。それと相まって、今後も原発がフル稼働するという状況は難しい状況でいかに夏を乗り切るかということが大きな課題です。
そこで大きな効果を発揮するのが棟換気システムです。太陽の日差しを受けて温度が急上昇する小屋裏の熱気を外部に排出するので、室内の温度を下げることが可能で冷房費の節約に効果があります。
一方で、冬場にも室内の暖房で発生する水蒸気を外部に排出することも可能で小屋裏に湿気がこもることを防ぐことが可能です。
今回採用した棟換気システムは「リンピア」という製品です。棟換気システムは様々な製品が販売されていますが、換気口が外部に露出している製品は換気性能が向上する半面、強風を伴う雨の際に雨漏りする可能性があることから、私たちは換気口が屋根材の下に設けられているものを使用しています。
表面には多くの換気口があり、中が空洞になっていて熱気や湿気を外部に放出しやすくなっています。
棟換気が必要な部分の面積に合わせて設置する棟換気システムの容量を決めることが必要で、複数の場所に設置することも可能です。
- 野地板の施工時に開口部を開けておきます
- 下地材で屋根の全体を一度覆います
- 下地材に開口部を開けます
- 棟換気システムを釘止めします
- 防水テープで雨仕舞をしておきます
- 瓦を葺きます