施工例
深谷市 腰葺きの数寄屋風住宅
高級住宅・数寄屋風住宅の施工
本物ならではの味わいがある
数寄屋風建築のお住まい
木の質感を感じ取ることができます
深谷市 I様邸
本物の良さをお分かりになるお客様はいつの時代にもおられます。
木を見せる住宅の伝統を担う一員になりたいと考えております。
このお客様の住まいで施工させていただいた一文字唐草は数寄屋建築などでよく用いられ、加工面・施工面ともに作業工程が多岐にわたるため、住宅建築に用いる場合は最高級に位置づけられる素材です。
一文字唐草の施工は直線美が命です
日本瓦の屋根の軒先には唐草という約物を使います。一般の住宅に用いられるのは、皆様がよくご覧になる「万十唐草」で団子状の丸い部分が付いています。
これに対して、この団子状の部分がないものが「一文字唐草」です。隣の唐草との接合部が見えるため、光が差し込まなくなるまでヤスリで擦り合わせてゆきます(合端といいます)。
合端台での加工段階で丁寧に仕上げることで、唐草の下端や接合部の縦の部分の直線美を一層引き出すことができます。
直線美が魅力です
一文字唐草は直線美に特徴があります。
どの部分でもカミソリの刃で切り取ったようなまっすぐな線が出るように工事してゆきます。
私たちは日ごろから「まっすぐで平らな屋根」を心がけていますが、一文字唐草を用いた工事は、日ごろの私たちの鍛錬をそのまま発揮する機会となります。
一文字唐草は一般住宅では最高級素材になりますので、こういった機会を与えていただいたことに感謝し、魂を込めた仕事を心がけます。
一文字唐草を使った腰葺き。格調高い屋根がまっすぐに、そして平らに仕上がりました。
精度の高い仕事を目指すために
腰葺きに対応した一文字唐草の加工をしています。
腰葺きの場合の加工方法
腰葺きの場合は銅板の上に一文字唐草を施工します。
銅板は重なり部分がかなりの厚みを持つため、この分だけ一文字唐草の下端部分に段差を作っておかないと、右の写真のように隙間ができてしまう場合があります。
この段差の大きさは、使う銅板の厚さを計算したうえで決定し、すべての一文字唐草に均等の段差を作ります。
腰葺きでない場合の加工方法
一文字唐草を使う場合は通常、下端が文字どおり一文字になるように加工してゆきます。
加工前のように隙間が開いていたり、下端がのこぎりの刃のようになっていると、屋根全体が締まりのない印象を受けることになります。
加工後のように隙間がなく、下端が平らになるように加工することで、一文字唐草の特徴を発揮することができます。
瓦の重なり目もきれいに加工しています
どんな仕事でもベストを尽くすことが求められると思いますが、一般住宅で用いられる最高級素材である一文字唐草ではそういった仕事を任せていただけることに感謝し、その期待に応えられるよう、最善を尽くします。
重なり具合が正面から見えることになりますから、加工精度には細心の注意を払います。
施工時の精度を長持ちさせるために
一文字唐草のつけ方を一工夫します
一文字唐草の接合部は下になる側(A)と、上のなる側(B)があります。お住まいになる方が屋根を眺めた時にBの側がこの時、BがAよりも前面に出ていると非常に見苦しい状態となります。その写真が右の状態です。
そこで、最初からAの表面よりもBの表面を若干後退させておきます。そうしておくことでこのような状態を回避することができます。
また、一文字唐草はすべてステンレス製の釘で2本ずつ止めつけられていますが、長年のうちにはごくわずかですが、下にずれてしまうものもあります。
このようにBの上になる部分を後退させておくと、Bの部分がAよりも前に出てきてしまうことを防止することができます。
ケラバをつける時にも同様の心遣いをしています
ケラバも、一文字唐草と同様に2枚の瓦の接合部では、上の瓦の表面を下の瓦の表面よりも後退させておきます。瓦でも、一歩引いた方がきれいに見えるのですから、人間の世界と似たところがあります。
まっすぐで平らな屋根にするために
ケラバを平らにつけます
腰葺きの時はケラバは銅板の上に載ってしまうために、ある程度銅板の不陸を拾ってしまいます。
しかしながら、銅板の不陸を可能な限り調整することで、ケラバを平らにつけることができます。
ケラバは下から平らについているかどうかが目立つ箇所で、平らについていると屋根全体が引き締まりますので、魂を込めて仕事にかかります。
棟を平らに積みます
まっすぐで平らな棟はお住まいを引き立てます。きれいに見える棟は、瓦がいいからきれいに見えるのではありません。一番下の段から平らでまっすぐになるように、丹精を込めて一段ずつ仕上げてゆきます。
丁寧に積んだ棟は、何段積んでも平らでまっすぐなままです。
担当者より
数寄屋風住宅は高級住宅に分類されます。素材も現在の住宅事情からすれば、滅多に使われることのないものがふんだんに使われます。
1件の仕事に価値が高いものと低いものは存在しないと思いますが、こういった仕事を任せていただくと特にやりがいを感じ、感謝の気持ちでいっぱいになります。
客観的に見て、コンスタントにこうした仕事を任せていただけるという環境にいることをありがたく思うと同時に、私たちが一層の努力を怠ってはいけないのだと思います。