施工例
太田市 混ぜ葺き仕様の洋瓦を使った屋根
落ち着きがある茶色の瓦に色ムラが加わってモダンな屋根になりました
屋根は外部のデザインを決定
する大事な要素です
天気によっても色具合が違います
太田市 K様邸
瓦は本来、一枚ごとに微妙に色が異なり経年変化で色ムラ
が生じます。これをデザイン化したものが混ぜ葺き仕様の瓦です。
近年の住宅は安さが命。ともすれば施工が簡単で単価の引き下げが可能である屋根材が採用されることが少なくありません。
ですが、本来屋根は外部のデザインを決定する大事な要素。屋根材選びも慎重に行いたいものです。瓦は焼き物ですから、一枚ごとに色合いや形状が微妙に異なります。しかも、経年変化によってその差異が大きくなって行く傾向があります。
そんな瓦本来の持つ味を意識的に強調した製品が最近よく見られるようになりました。瓦の性質をより積極的に味わおうとする方にお勧めの製品です。色合いは天候や日差しの強さによっても異なり、見る人の目を楽しませてくれます。
色むらのある屋根に仕上げる方法は複数あります
このお住まいのお客様は個性的なデザインの瓦のお使いになりたいとのご要望があり、最近多く見られるようになった色ムラのある瓦をお選びいただきました。
最近良く見られるのが色ムラがついたように施工した洋瓦ですが、工事方法が複数あります。今回はまず、それぞれの特徴について記事を書きたいと思います。
数種類の色の瓦を混ぜ合わせる方法
この場合は白、オレンジ色、こげ茶色の3種類の色の瓦を混ぜ合わせて工事しています。
一枚ごとの色の変化が大きい場合があり、使用した色がお互いに馴染むかどうかという問題があります。白い瓦のように斜めに色が揃ってしまうこともあります。
通常色で施工することが可能なため、予算を抑えたい場合に採用することで色ムラのある屋根に似たイメージで仕上げることができます。
色ムラのある瓦を用いる方法
一枚一枚色ムラが施されているので、数種類の色の瓦を混ぜ合わせる場合のような極端な色の違いがありません。
1枚ごとの色の変化が微妙ですから、全体的に色ムラがありながら落ち着いた仕上がりになります。
通常色よりも瓦代金が高い場合が多く、数種類の色の瓦を混ぜ合わせる方法よりも予算が必要になります。
ヨーロッパ産の瓦を用いる方法
最近の色ムラがついたように施工する洋瓦の原点になった製品です。
一枚ごとに色ムラがあるため、数種類の色の瓦を混ぜ合わせて葺く必要がありません。また、地中海沿岸のお住まいのようにお洒落な屋根を演出することが可能です。
輸入の製品であるため価格は国産よりも高めになります。
工事方法の選択にあたっては、もともとの原点にこだわってデザイン性を追求したい場合はヨーロッパ産の瓦を使うことが必要になりますし、似たような雰囲気を味わえればいい、と言う場合は色ムラのある瓦を、そして予算的に制限がある場合には数種類の色の瓦を混ぜ合わせて葺くなど、状況に応じて瓦の持つ個性を利用してお客様のご要望に応じて瓦を選択することが大事だと思います。
現代住宅はお客様のご要望が多様でそれぞれポイントになる場所が異なります。ですから私たちもより多くの引き出しを持って、お客様のご希望に沿った製品をご提供できるように心がけております。
このタイプの瓦は天候によっても色が変わります
雨上がりのあとの深曇りの日の瓦の色
この写真を撮影した日は撮影直前まで雨が降り続いていました。従って瓦も若干雨水を吸収したために茶色が濃くなって見えています。
雨上がりでなくても、曇りの日は茶色が濃くなって見える傾向があります。
良く晴れた日の瓦の色
良く晴れた日に撮影しましたので、瓦の本来の特徴がよく出ています。
良く晴れた日は紫外線の影響が出る為か茶色が薄くなって見える傾向があります。日差しが強くなるほど茶色は薄くなって見えます。
担当者より
K様、今回は大変お世話になり、ありがとうございました。
今回ご選択いただきました洋瓦は、最近の瓦のトレンドである「色ムラのある瓦」です。このタイプの瓦はここ10年くらいで徐々に認知が進んでいる製品で、ヨーロッパ産の製品を参考に国内各社で開発が続けられているものです。
これまでの国産の製品では瓦は単色で色ムラのない製品が追求されてきました。これは伝統の和瓦において全製品が均一の発色をすることがよし、とされてきたことによる影響が大きいと思います。
事実、私たち施工業者にとってもこのような製品を日頃の経験の中からお勧めしてきた経緯があります。
現在ではお客様のご要望は多種多様で、これらにお応えできるよう努力しております。今回のお客様は瓦についても強い関心をお持ちであり、ヨーロッパの製品を品ぞろえしております私たちにとっては、今回お使いいただいたような製品をご選択いただけることは本当にやりがいを感じるところであり、日頃の努力が報われる思いがするところでもあります。本当にありがとうございました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様なご要望をお持ちでした
1個性的で味のある洋瓦を使ってほしい
一般的には洋瓦は外壁等の色合いとのバランスを考えて、無難な黒をご選択いただくことが多いです。
しかし、お客様は家の顔としてデザイン上重要な部分を占める屋根の色についても強いご関心をお持ちでした。
2屋根の耐久性も考えて棟換気システムを採用してほしい
瓦はスレート材などの屋根材と異なり、大きな通気層を持つことから屋根下地材に大変やさしい特性を持っています。
これに棟換気システムを付加することで鬼に金棒の状態になります。
以上のお客様のご要望を受けての今回の工事のポイントです。ご要望を色分けし、その色に対応した工事のポイントになっています。
最近トレンドの色むらのある瓦で個性的な屋根に仕上がりました。茶色、オレンジ色、黒がバランス良く配色されて個性的な中にも落ち着きがあります。
細かな、そして粒子状の彩色が大きな効果を発揮します
数種類の色の瓦を混ぜ合わせた場合の1色の最小単位は瓦1枚です。これに対して色ムラのある瓦の1色の最小単位は1枚の瓦の中のごく限られた部分です。
しかも、色ムラのある瓦の1つの色は無数の細かな粒からなっているため、下地となる基本色(今回の場合は茶色)と馴染ませることができます。
この2つの大きな違いが外見を大きく左右します。
基本パターンを繰り返すことで落ち着いた仕上がりが可能になります
今回ご使用いただいた瓦は写真のように以下の3つのパターンが用いられています。
- 基本色
- 基本色 + オレンジ色
- 基本色 + 黒
この時に基本色の茶色、オレンジ、黒が似通った色であり、相互に反発しあうことのない色であることが大事です。ベースの色と全く異なる色の瓦が用いられると、その色が浮き上がってしまいバランスが悪くなってしまいます。
1枚だけ見ると派手に見えるものであっても、このように基本となるパターンが数種類に絞られていると全体として落ち着いた屋根に仕上げることができます。
棟換気システムは小屋裏(2階天井裏)の夏季の熱気、冬季の湿気を屋外へ排出します。お住まいにも経済的にも優しいアイテムです。
小屋裏の空気を屋外に排出します
棟換気システムは小屋裏の空気を屋外に排出する設備です。従って以下の手順で設置します。
- 屋根下地材に開口部を設けて小屋裏の空気を排出するスペースを確保します。
- 開口部の上に棟換気システムを設置して瓦を施工できる状態にします。
瓦を施工した後は棟換気システムの開口部から夏季の熱気や冬季の湿気が排出されます。
小屋裏の空気を排出せずに、そのままにしておくことの問題点
関東地方は最近真夏に猛暑に見舞われることが少なくありません。しかも、その温度は40度近い猛烈な暑さです。
こうした状況において、下地材は一日の間に大きな温度差を繰り返すことになるため、劣化速度を速めることがあります。このため、劣化の原因である夏季の温度変化を抑えることで下地材の耐久期間を延ばすことができます。
真夏の小屋裏の温度をサーモグラフで撮影した画像です。瓦は他の屋根材に比べて季節ごとの温度変化を抑える効果が高い屋根材ですが、それでも小屋裏温度は50度を超えることが珍しくありません。
棟換気システムは、小屋裏の熱気を屋外に排出することで夏季における小屋裏の温度変化を抑える働きをします。
この資料は愛知県陶器瓦工業組合にて作成された「瓦はすごい 瓦の性能を科学する」の中で掲載された資料を引用させていただきました。