リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
鬼瓦が斜めに曲がってしまいました
特殊な鬼瓦を使ったことが原因でした
熊谷市 T様
こちらのお住まいは築後30数年のお住まいで、新築時にお世話になりました。
私たちが鬼瓦を設置する際はお寺の本堂を工事する際の基準に準じて鬼瓦を固定するので、鬼瓦が落下したり曲がったりすることは滅多にありません。
原因を調べてみると特殊な幅が広い鬼瓦を使ったことが原因でした。
そこで、基準を引き上げて鬼瓦を固定する銅線の本数と固定場所を変更することにしました。
今回の修理のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1瓦屋根の鬼瓦が落ちてくると危険なので、修理してほしい
屋根に上がって実際に状況を見てみると、鬼瓦が斜めに曲がってしまっただけなので落下する心配はありませんでした。
しかし、曲がった鬼瓦がそのままではいけませんので、一度鬼瓦を外して付け直して修理することにしました。
程度は軽いものの、似た症状の鬼瓦があり、その鬼瓦も修理の対象としました。
修理完了後の瓦屋根です
鬼瓦が曲がってしまいました。
- 修理前の瓦屋根の鬼
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鬼瓦と棟の間に隙間が生じて、鬼瓦が飛び上がったような格好になってしまいました。鬼瓦を固定する銅線が緩んでしまったわけではありませんでしたが、積雪時に降った雪が軒先へ移動する際、鬼が曲がってしまったものと思われます。
- 修理後の瓦屋根の鬼
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曲がってしまった屋根の鬼瓦もキチンと元どおりになりました。
鬼瓦を固定する同線を3本に増やし、鬼瓦の横には雪止め瓦を設置し、対策は万全です。
瓦屋根の鬼瓦を固定する銅線を設置するために既存の棟を一部撤去します。 銅線は屋根下地に釘止めして修理します。
屋根の修理に必要な分だけ 棟の一部を解体しました
銅線を屋根下地から釘止めする為には部分的に全ての瓦を除去し、屋根下地を露出させる必要があります。
しかしながら、瓦の除去面積は修理費用に直結する為、費用を抑えるために必要最小限の作業にとどめる必要があります。
掲載写真は、これ以上の瓦を除去すると修理費用が大幅に増加する、という直前の段階で除去作業をストップしました。
銅線を屋根下地に釘止めするには十分な範囲を確保してあります。
修理に際し鬼瓦を固定する銅線を屋根下地に釘止めしました
修理前は赤丸の銅線1本でしたが、新たに青丸の銅線を2本屋根下地に釘止めしたことで3本の銅線で鬼を固定することになりました。
新たに2本の銅線を出した理由は、今回鬼が斜めに曲がってしまったことを受けて、3点支持にして左右からの力にも耐えられるように配慮したからです。
- 銅線を釘止めする場所
- 黄色の矢印部分に「垂木」という比較的大きな木材が棟から軒先部分に向かって存在し、この木材に銅線を釘止めします。
- 銅線を瓦の上に出す場所
- 新しく出した銅線は鬼瓦の一番低い部分である足元を固定する為、一枚下の瓦から銅線を出しました。
瓦屋根の鬼瓦の付替え修理にとりかかります。新しく出した銅線を通すための穴を新たに開けて3点支持で鬼瓦を固定します。
銅線を通す穴を新しく開けます
2つの赤丸の中心が新しく開けた銅線を通すための穴です。ここに銅線を通して鬼瓦を固定します。
3点支持にするためには本来、新しく開けた穴は中心から離れれば離れるほど効果を発揮するのですが、それでは棟瓦が積めなくなってしまうため中心良寄りに開けました。
ただし、向かって右側の穴は雪の影響を受けやすいため、向かって左側の穴よりも外寄りに穴開けして、より効果を発揮するように配慮しました。
鬼瓦を銅線で固定しました
修理前は銅線1本で固定していましたが、今回の修理では3本の銅線で固定しています。強度的には3倍になりました。
鬼瓦の上部に加えて積雪の影響を受けやすい鬼瓦の足元部分でも固定する方法を採用したため、思い切り手で力を加えてもビクともしない強度を実現することができました。
2番目の画像で鬼瓦の後方部分に瓦のかけらを敷き詰めて、鬼瓦の後ろの部分に棟を積んだ際の雨漏り防止の工夫もしています。
- 3点支持された鬼瓦
- 赤丸の既存の銅線と青丸の新しく出した銅線で3点支持された鬼瓦。
- 雨漏り対策に用いる瓦のかけら
- 本来雨が流れる屋根瓦の上に棟を積むため、瓦のかけら(赤丸の周囲)を敷き詰めて雨の流れ道を確保して雨漏りを防ぎます。
鬼を固定する銅線の本数
画像はこの修理の直前に工事していたお寺の新築工事で使った鬼瓦です。
大きさはT様のお住まいのものよりも3割以上大きな鬼ですが銅線2本で固定しています。
T様のお住まいの場合は鬼の足元が幅広であるのに対して、お寺で使った画像の鬼は寸胴であるという点が異なります。
足元が幅広の鬼は固定の仕方に1工夫必要であるということが、今回の修理の教訓になりました。
鬼瓦の取り付けが終了した瓦屋根修理。 隅棟の積み替えに取り掛かります。
棟瓦を固定するための材料に全て南蛮漆喰を使います
この画像は修理箇所を上から軒側を見下ろす角度で撮影しています。鬼瓦が画像最上部、やや右寄りの位置に見えます。
左上から右下に向かって伸びている棟を隅棟と言います。
今回の修理は雪害によって鬼が曲がってしまったことによるものです。
今回は棟を一部撤去していることもあるので、棟瓦を固定するための材料を全て南蛮漆喰(画像中の黒い漆喰を南蛮漆喰と呼びます)で統一して一体化を図りました。
画像中で少しだけ見えている赤丸の瓦は青丸の瓦と同じものです。形状に因んで「丸」と呼ばれています。
ここの列は上方から雨水が流れてきます。この雨水を隅棟の下を潜らせて軒先に向かって流すためにはトンネルが必要です。
そのトンネルの役割を果たすのが赤丸の瓦です。
瓦屋根の隅棟修理を仕上げてゆきます
棟の修理で最も注意を払うことは、棟を平らに積むことです。
なぜなら、棟を積んで凹凸ができるということは低くなった部分は勾配が緩やかになって雨漏りしやすくなるからです。
今回の修理に当たっては、一番下の段の棟瓦を撤去せずに修理することが可能であったため、棟を平らに積むための労力を最低限に抑えることができました。
これは修理前の棟が平らに積んであったことが一番の要因です。
修理前の状態が良ければ修理の際の必要な手間を抑えることができますが、状態が悪ければ必要な手間が増えます。
修理の際の見積もりが難しい原因はここにあります。
- 隅棟の2段目修理が終了しました
- 撤去部分を必要最小限に抑えてあるため、既存の棟瓦が半端まで含めて全て利用できました。
- 隅棟の修理が完成しました
- 一番下の段の棟瓦を撤去しなくても修理が可能であったため、隅棟の先端部分と平らに棟を積むことが容易でした。
隅棟の積み替えが終了した瓦屋根修理。下り棟を積み替えて修理を完成させます。
下り棟の棟瓦を固定するための材料も全て南蛮漆喰を使います
画像右上から伸びてくる隅棟は、固定に使う材料として南蛮漆喰で統一することで一体化を図りました。
そして隅棟と交わる、この下り棟も同様の修理を行って、隅棟と下り棟の一体化を試みます。
棟全体の強度を上げることで鬼瓦を支える銅線の可動域が極限まで小さくなり、鬼が曲がってしまうといった出来事が再発しないはずです。
下り棟の修理が完成しました
曲がってついていた鬼瓦も棟瓦にピッタリと接しています。
これで、鬼瓦の付け替えを内容とする瓦屋根修理も完成を見ることとなりました。
外見は修理前と、それほどは変わらないのですが、中身は鬼瓦が曲がってしまわないように様々な工夫が凝らされています。
外部対策として雪止めを設置しました
棟に様々な積雪対策を施しましたが、屋根に積もった雪の重量が分散するように雪止めを設置しました。
これで、鬼瓦に屋根の雪の重みが集中せず、負担が軽減するはずです。
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 棟
- 鬼を付け替える際に一部撤去する必要が生じたため、固定する材料を全て南蛮漆喰にすることで棟を一体化させ、強度を上げることを試みました。
- 鬼
- 曲がってしまった鬼瓦を外し、固定する銅線の本数を3倍に増やして固定強度を上げる修理をしました。
- 平葺き
- 積雪荷重が鬼に集中することを避けるため、雪止めを設置しました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 2日間
- 費用
- 5~15万