リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
はみ出してしまった棟瓦
部分修理を繰り返すよりも賢明と判断し、棟を積み替えました
熊谷市 N様
板金屋根と異なり部分修理が可能な瓦屋根。
ですが、細かい修理を繰り返しよりも思い切った修理をした方がトータルの修理費用を抑えることが可能な場合があります。
今回は棟を全て積み直すことを提案いたしました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1修理費用を抑えたい
今回は店舗の屋根の修理をご検討されていることもあり、なるべく修理費用が掛からない手段をご検討でした。しかしながら、今後も同様の症状が発生することが予想され、修理箇所が重複する可能性が高いため、棟を全て積み替えた方がトータルコストを抑えることができることを説明いたしました。
2今後、同様の修理が必要にならないように工事して欲しい
現代工法では棟の強度を上げるために様々な工夫を凝らしており、よほどのことがない限り同様の事象は発生しないことを説明いたしました。今回の記事でも、そのための工夫をご覧いただくことが可能です。
工事完了後の屋根です
棟瓦が、はみ出してしまった棟を積み替えて綺麗に仕上がりました。
- 修理前の棟瓦
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画像中央部付近のように棟瓦が大きくはみ出してしまった部分が散見されました。
はみ出してしまった部分以外に上下左右の棟瓦も手を加える必要があるため結果的にかなりの部分が工事対象になる上に、今回手を加えなかった部分が将来的に工事対象になる可能性がありました。
- 修理後の棟瓦
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棟を全て積み替えました。
棟の強度が上がるように様々な工夫が凝らしてあります。
棟瓦がはみ出してしまった原因。 これに複数の角度から対処して行きます。
泥の使い方
棟瓦を積む際に泥を使う目的は主に以下の2つがあります。
・棟瓦を固定する
・棟瓦を適切な勾配に保つ。
修理前の棟では赤丸の中でしか泥が使われていない為、泥と棟瓦の接触面が少なくなってしまい、結果として泥が棟瓦を固定する働きがかなり弱くなっています。 本来、途切れ途切れではなく連続して泥を使うべきです。
面積比例とした場合、本来の4割程度の力で棟瓦が固定されているイメージです。
修理時の泥の使い方
修理時の泥の使い方を記録した画像です。
途切れ途切れに泥を使うのではなく、連続して泥を使っています。
こうすることで、接触面が増えて棟瓦を固定する作用を最大限に引き出すことができます。
一番下の段の棟瓦の積み方
一番下の段の棟瓦はその上に積む棟瓦を支える役割をするため、慎重に施工することが求められます。
修理前の積み方と修理時の積み方を要点に絞って比較します。
- 修理後の一番下の段の棟瓦
- 赤丸を付けた部分はシーリング材で隣り合う棟瓦同士を接着すると同時に繋ぎ目からの雨水の侵入を防いでいます。青丸部分は向かい合う棟瓦同士を針金で緊結しています。
こうして、隣同士、向かい合う棟瓦同士を固定しているので一番下の段の棟瓦は全く動くことがありません。
- 修理前の一番下の段の棟瓦
- 現代とは異なり、建築用の資材等も豊富ではなかったためシーリング材等の使用はありませんでした。時代とともに建築様式は変化して行きます。
ですから修理を手掛けることで古いお住まいであっても最新の建築様式を取り入れて行くことができます。
棟瓦を固定する針金の使い方
棟瓦を固定する方法の2つ目は針金で緊結することです。
修理後は修理前の2倍の密度で緊結しています。
- 修理後の針金の使い方
- 青丸を付けたように、丸ごとに針金を使って棟瓦を緊結しています。修理前は1本おきに緊結されていたので2倍の密度になります。
修理前とは異なり5段の棟瓦を1本の針金で緊結するのではなく、上の3段の部分と前項で画像を掲載しました一番下の段の2か所に分けて針金で緊結しています。針金は長くなるほど緊結する力が弱くなるので、2つに分けて緊結しました。
- 修理前の針金の使い方
- 赤丸を付けた針金で、5段の棟瓦をまとめて緊結しています。棟の一番上の役物を「丸」と言いますが、現代の工法では丸ごとに針金で緊結します。
この工法だと画像のオレンジ色で表示した場所も針金で緊結することになるのですが、この工事の仕方だったら、修理前のように棟瓦がはみ出してしまうこともなかったかもしれません。
一番下の段の棟瓦の漆喰
修理前の時代は一番下の段の棟瓦は泥を土台として使い、その表面を漆喰で保護する手段が採用されていました。
現代工法では土台部分に全て漆喰を利用するため、後年、漆喰が剥がれ落ちるということがありません(赤丸部分)。
また、泥は乾燥に伴ってひび割れすることがありますが、土台部分に使われる漆喰はこうしたことがありませんので、耐久性にも優れています。
棟瓦の加工
棟瓦を横から見ると長方形ですが、焼成の際に以下の3つの変形が生じることがあります。
・完全な長方形(下の段の棟瓦と全ての部分で接することが可能)
・わずかに上に凸の長方形(下の段の棟瓦と両端の2点で接することが可能)
・わずかに下に凸の長方形(下の段の棟瓦と真ん中の1点でのみ接することができない)
ここで問題なのは、わずかに下に凸の長方形です。下の段の棟瓦と1点でしか接することができないので安定しません。
そこで画像の様に棟瓦を加工して接点の面積を広げます。
画像は棟瓦を裏返したところを撮影し、赤丸部分が加工した場所です。
- 加工した棟瓦を使った場所
- 赤丸を付けた場所が棟瓦を加工した場所で、接点が拡大したために安定性が増しています。
ただ、接点を全面に拡大することは棟瓦を非常に薄くしてしまい棟を平らに積むことが出来なくなるので、回避します。
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 棟
- 棟を全て積み替えました。
一番下の段の棟瓦はシリコンによるシーリングで隣り合う棟瓦を固定するとともに雨水の侵入を防ぎ、向かい合う棟瓦は針金で緊結して棟瓦を固定しました。
また、修理前と比較して棟瓦を緊結する針金の本数を2倍にすることでより丈夫な棟になるように努めました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 3日間
- 費用
- 15~20万