リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
J様の駅舎の屋根点検
突風などによる屋根瓦の飛散防止のため、屋根下地の総点検を実施
J様
昨今の異常気象による極端な気象条件の下、建築物が様々な被害を受ける事象が頻発しています。
そこで、屋根瓦の飛散による事故を未然に防止し乗客の安全を確保する為、高崎管内の駅関連施設における瓦屋根の下地を総点検することとなりました。
点検に当たっては同社建設部門の厳格な監督のもと入念な作業が実施されました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1お客様の安全な電車ご利用を確保する観点から、駅関連施設の屋根下地を厳重に点検してほしい
近年、台風や竜巻などによる突風による建物被害は大規模なものになってきました。駅関連施設においても、そうした被害を未然に防止する取り組みが行われています。
今回は屋根材を釘で固定する際に、その受け止める側となる屋根下地が十分にその効力を発揮できる状態か否かを調査いたしました。
調査作業の概要です
作業は全て、駅関連施設の屋根の左右両端部に葺かれている瓦の屋根下地が対象になりました。
破損しないように屋根瓦を剥がすとともに、下地の状態調査作業の後、屋根瓦の原状復帰に細心の注意を払いました。
- 調査前のコンクリート製屋根瓦
-
駅関連施設であるため、電話線や電線などが調査作業に影響することもあり注意を要します。
また、コンクリート瓦の場合にはペンキ塗装がしてあり、容易に瓦が剥がせない場面もあります。
- 屋根下地の調査作業
-
状態調査後には屋根下地をシーリング処理してからの原状復帰、瓦と瓦の隙間を利用した瓦の釘止め等、狭いスペースを利用しながらの細かな作業の連続です。
岡部駅での調査作業。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
岡部駅での作業内容
駅舎の屋根の調査となり、利用客の通行がないスペースでの作業ではありましたが、細心の注意を払いながら作業を進めました。
特に難易度の高い作業を伴わないため、順調に作業が完了しました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 外部からの屋根下地状況調査
- 屋根の左右両端部の瓦を剥がしての下地調査は全数検査ではなく抜き取り検査です。剥がさない部分の下地調査は屋根の下から目視で確認します。
雨漏りで屋根下地の腐食が進んでいれば下地が腐っているのが屋根の下から目視で確認できます。
- 調査するコンクリート瓦の特定
- 周囲の状況や既存のコンクリート瓦の状況を加味して、どの瓦を剥がすかを決めます。
- 既存のコンクリート瓦の撤去
- バールなどを使用して、既存瓦を撤去して屋根下地が確認できるように準備します。
- 屋根下地材の切断
- 屋根下地の木材を確認できるように屋根下地材にカッターナイフで切れ目を入れます。後でこの切れ目はシーリング処理をして塞ぎます。
- 針金でコンクリート瓦を緊結
- 屋根下地の状況を確認した後、釘止めだけでなく、針金も使ってコンクリート瓦の飛散防止のために緊結します。赤丸部分に釘止めした針金があります。
- 瓦の上からの釘打ち
- すでに内部でコンクリート瓦を釘止めしていますが、コンクリート瓦の上からも釘打ちしています。既存の状態で既に瓦の上からの釘打ちがしてありましたので、同様の作業となりました。瓦の飛散を徹底的に防止する観点からの処置です。
- 釘穴のシーリング
- 先ほどコンクリート瓦の上から釘打ちしましたが、その釘を上からシーリング処理して雨漏りを防ぎます。
- 下地材の処理と針金による緊結
- 先ほどとは別の場所の岡部駅での調査の画像です。屋根下地の状況を確認した後にシーリング処理しています。
瓦の飛散防止として瓦を釘止めしたした後、更に針金によって瓦を緊結するために、釘打ちした針金を準備してあります。赤丸の部分が釘止めした針金です。
- コンクリート瓦の復元
- 瓦を剥がして屋根下地の状態を確認した後、コンクリート瓦を復元した状態です。赤丸部分で瓦の上から釘打ちした後、シーリング処理がしてあります。
明覚駅での調査作業。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
明覚駅での作業内容
駅のホームに隣接した施設であるため乗客の往来に配慮しながらの作業となり、列車の発着が無い時間帯を利用して、細心の注意を払いながら作業いたしました。
電話線を支持するワイヤーと絡む場所を選定することとなり、若干難易度の高い作業となりました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 外部からの屋根下地状況調査
- まず、該当する施設の左右両端部の屋根下地を屋根の下から確認します。屋根下地の老朽化の兆候は全くありませんでした。
- 調査対象の選定
- 設置した足場との兼ね合いで、電話線を支持するワイヤーと絡む調査対象を選定することになったため、若干難易度の高い作業になりました。
- 調査対象の一時撤去
- バールなどを使用して、既存瓦を撤去できる隙間を作ります。撤去する瓦の厚みだけ隙間が作れれば作業が可能です。
- 屋根下地材の切断
- 屋根下地の木材を確認できるように屋根下地材にカッターナイフで切れ目を入れますが、下地のアスファルトルーフィングが硬化しており、無理な作業で余計な切れ目を作らないよう注意を要しました。
- 屋根下地材のシーリング処理
- 下地の状態から判断して雨漏りしていないのですが、念のため切断した下地材をシーリング処理して雨漏りに備えます。
- 調査対象を針金で緊結
- 赤丸で囲んだのは調査対象の瓦の釘穴で緊結した針金で、屋根下地に釘止めしてあります。この後、この、僅かなスペースを使用して調査対象を釘止めしました。
寄居駅での調査作業1。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
寄居駅での作業内容
駅のホームからは若干離れた線路維持管理作業時の待合スペースの調査です。
周囲に利用客の往来がなく、作業しやすい状況で安全管理が容易な作業となりました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 調査対象の建物
- 利用客が近づくことは無い建物ですが、屋根材が飛散することのリスクを考慮しての点検です。比較的古い建物でした。
- 調査対象の選定
- 比較的低所の作業でしたので、脚立を利用して足場を確保しました。足場から作業できる範囲内での調査対象を選択しました。
- 屋根下地の状態確認
- 屋根下地材を切断してみると、竣工時同様の状態の合板が確認できました。この後下地材をシーリング処理して次の工程に移りました。
- 調査対象の釘止め
- 今回の調査では釘止めの際にスペースを確保することが容易で簡単に釘止めできました。赤丸で囲んだのがステンレス釘です。釘止め時に屋根材も一緒に強打して割ったしまわないように、若干、釘が浮いた状態で作業を終了しました。
児玉駅での調査作業。 和型・燻し瓦の屋根下地の状態を調査しました。
児玉駅での作業内容
駅のホームと接している建物の調査です。
立地の性質上、列車の時刻表で発着時刻を確認し、利用客の安全に配慮しながらの作業にになりました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 調査対象の建物
- 駅舎からは少し離れた場所にありますが、建物がホームに入り込んでいるような状況の建物です。後ろの電柱はホームに立っています。
- 調査対象の瓦の撤去
- 調査対象の瓦を撤去し、屋根の下地材が露出した状態です。この段階で雨漏り跡が無ければ屋根下地が腐食していることはありません。ちなみに雨漏り跡はありませんでした。
- 屋根下地の状態確認
- 屋根下地材を切断してみると、下地の状態そのものは良好で問題ありませんでした。ホコリが積もっている状態でしたので雨漏り跡もありませんでした。
- 屋根下地材のシーリング
- これまでのところ雨漏りしたことはないようでしたが、原状復帰のためにシーリング処理をして対象の瓦を戻します。
- 屋根瓦の復元
- 瓦を釘打ちして元の位置に戻します。写真のスペースを利用して釘止めしました。赤丸は瓦を緊結するために出しておいた針金を囲んでいます。日本瓦の左右両端部に用いる瓦は、針金で緊結する為の穴が開いています。その穴を通して屋根下地に釘止めした針金を外に出し、瓦を針金で緊結します。
寄居駅での調査作業2。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
寄居駅での作業内容
駅のホームに建てられた待合室の調査です。
他の建物の一部が調査対象のコンクリート瓦の上に接しているため、当初、作業が可能か否か危ぶまれていました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 調査対象の建物(全景)
- 駅のホームをつなぐ通路から見た調査対象の建物の全景です。ホームの待合室という性質上、列車の運行状況と利用客の往来の両面からの安全管理に大きな注意を払いつつの作業になりました。
- 調査対象の屋根の状態
- 画像の様に待合室の屋根の上に別の建物の一部が接してしまい、調査のために既存の瓦を一度撤去することが難しい状況です。
- 周囲の構造物の一部解体
- 調査対象の建物の屋根に接している構造物を一旦、一部解体することで作業スペースを確保しました。既存では赤丸で囲んだ茶色の鉄板がビス止めされ、鉄板の上に重ねるようにプラスティック製の波板が張り下げられていました。
- 調査対象の作業スペース
- これまで、ほとんど作業スペースがありませんでしたが、周囲の構造物を一旦一部解体することで作業スペース(赤丸部分)を確保することができました。このスペースを生かして作業を進めて行きます。
- 屋根下地の確認
- 屋根の下地材を切って下地の木材の状態を確認しています。調査対象の屋根材の上に別の構造物が覆いかぶさるような状態であったため、下地の木材も非常にきれいな状態でした。
- 下地材のシーリング処理
- 既存の部分で下地材をホチキス止めした部分の穴がそのままになっていた部分がありましたので、今回カットした部分と合わせてシーリング処理を行いました。
毛呂駅での調査作業。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
毛呂駅での作業内容
改札口がある駅舎の屋根の調査です。
利用客が多いため、終電が発車した後の夜間の作業となりました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 調査対象の建物の屋根
- 利用客の増加に伴い、増築が繰り返された為と思われますが、比較的入り組んだ屋根で調査対象が5か所に及びました。作業内容は全て同一です。
- 屋根下地の状態の確認
- 今回の調査の中では、屋根下地に使われている木材は構造用合板が多かったのですが、この屋根では無垢材が使われていました。状態も良好で雨水などによる劣化はありませんでした。
- 屋根下地材の原状復帰
- 下地材のシーリング処理にあたっては、既存の状態でホコリが存在してシリコン材が塗布しづらいので入念にホコリを除去してからシリコン材を塗布しています。
- 屋根材に対するシーリング処理
- シーリング処理は雨漏り対策に使う場合がほとんどですが、シリコン材の接着作用を利用して部材同士を接着することにも効果を発揮します。該当場所は利用客が多いため釘止めや針金による緊結の他、屋根材同士をシーリング処理して飛散防止の手段としています。
越生駅での調査作業。 コンクリート製瓦の屋根下地の状態を調査しました。
越生駅での作業内容
改札口がある駅舎の屋根の調査です。
駅舎の入り口近くでの作業となるため、利用客の安全を確認しながら細心の注意を払っての作業となりました。
調査の結果、屋根下地は特に問題の無いことが判明しました。
- 屋根の下からの状態確認
- 当該調査対象の屋根の様に下地の木材が構造用合板の場合、下地が劣化している場合は屋根材を剥がさなくても、屋根の下から状態を確認することが可能でもあります。今回も大丈夫であろうことは推測が付く状態でした。
- 既存の瓦を撤去した状態
- 施工時の下地材は、ほぼ平らの状態ですが夏季の太陽熱の影響でこの様に波打ったり水泡のような突起物が発生したりしますが、使用している場所の状況からしてどうしても、やむを得ない面があります。
- 屋根下地の状態確認
- 下地に用いた構造用合板は雨漏りの跡もなく、きれいな状態で、劣化は全く認められませんでした。
- 下地材へのシーリング処理
- カットした屋根下地材をシーリング処理し、屋根材を元に戻して作業を完了しました。
担当者より
今回の仕事をとおして、J様の安全管理に対する取り組み方が印象に残りました。
まず、台風や突風などの際に想定される屋根瓦の飛散による事故を未然に防止する為、管内で屋根瓦(コンクリート製を含む)を使用している駅関連施設を全て検査するということ。
ともすればコスト削減が優先される昨今、安全面を考慮した対策は後回しにしたくなるものです。
また、寄居駅での調査が困難ではないかと思われる建物についても一貫として調査を実施するという姿勢について。
伺った話では、当初、既存の状態で調査が不可能であれば、調査対象の建物に接している施設を解体しても調査を実施することになっていた、とのことです。
この様にして、我々乗客の安全が確保されているのだと目の当たりにしてみると、改めて公共施設を運営することの意味を肌で感じることができたような感じがします。
そこで、自分たちの取り組みを振り返って見た時、私たち自身も仕事に対する拘りを忘れることなく前に進んでゆくことが大事なのではないかと、ふと感じる部分がありました。
今回の貴重な体験を少しでも仕事の中で生かして行けたら、私たちの仕事が、より実りのあるものに変わって行けるような気がしています。
また、この記事をご覧いただいた読者の方にもJ様の安全管理について、少しでもご理解を深めていただけるキッカケになれば幸いです。
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 平葺き
- J様が所有する駅関連施設の屋根下地の状態を調査いたしました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 4日間