工事内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
欠落箇所が多数ある瓦屋根の修理
急所となる場所をピンポイントで対応しました
本庄市 U様
見た目では対応を要する箇所が多数ありますが、肝心な場所に絞って対処しました。
雨漏りもピタッと止まりました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1建物をもう少し長く使いたい
U様は現役の農家。後継者はいませんが、あと10年くらいは農業のお仕事を続けたいとお考えです。そのため、資材置き場として使っている現在の物置も同様の期間は使いたいとお考えでした。
2予算は抑えめに
築後の年数が経過していることもあり、全体的に瓦が動いていましたが、土葺きの屋根であることが幸いして多少の瓦のずれでは雨漏りすることはないため、雨漏り箇所と早急に修理が必要な場所に絞って工事することが可能になりました。
3一回り見て必要な場所があれば修理してほしい
建物の下から見ただけでは気が付かなくても屋根に上って見ると分かる修理箇所があります。特に後で雨漏りにつながるような場合もあるので対処しておくことが必要なケースが良くあります。
瓦の破損は雨漏りに直結することが多いです。特に瓦の横方向に破損している場合は要注意。
修理前の2階の屋根の状態です
画像中央部分が雨漏りしていた場所です。破損している瓦が散見されます。
破損した瓦の上には棟があって丸(棟の一番上に積んである役物で断面形状が半円形をしている瓦)が欠落しているので、丸が強風などで飛ばされて瓦の上に落下、瓦が割れてしまった為に、結果として雨漏りにつながったものと思われます。
横方向に瓦が割れた場合のイメージ図です
ピンク色の線で瓦が破損した場所を、青い矢印で雨の流れを簡略的に表現しています。
この場合は雨が矢印のとおり瓦の上を流れた場合、全て割れた部分に雨水が流れ込んでしまいます。
一方、縦方向に割れた場合を想定します。青い矢印の部分以外に割れ目があった場合、瓦の割れ目から雨漏りすることはありません。
雨水は瓦の中央部分(1番低い部分で、ちょうど矢印のあたり)を集中して流れて行くので、この部分以外が縦方向に割れて場合は殆ど雨漏りしません。
今回の雨漏りの原因となった棟の瓦の落下。丸を元どおりに積んで漆喰の剥がれた部分を補修しました。
まず、鬼を付け直しました
画像の一番右部分の垂直に立っている役物を「鬼」と言います。
元々は建物を火災から守る縁起物としての性格があり、正面部分に「水」の文字が浮き彫りになっている物もあります。
工事前は鬼を固定する針金が緩んで外れてしまっていましたが、針金を交換し、それを固定する釘まで打ちなおして鬼を付け直しました。
瓦の隙間で黒く見える部分は塗りなおした漆喰です。
丸を伏せなおしました
丸が落下してしまった部分も、丸が動かないように固定する役割を果たす泥が残っていましたので、これをきれいに撤去し、黒い漆喰を置きなおします。
ここで使った丸は落下の際に割れてしまったものもあるため、近く取り壊す予定の、もう1棟の物置で使われていたものを利用しています。
今回のお客様のように古い建物の場合は既に市販されていない役物も存在する為、瓦を保存しておくことも大切になってきます。
今回は古い役物を使うことができたため、部分的な修理で終えることができましたが、無い場合は丸を全て新しいものに交換することが必要になってしまいます。
漆喰の置きなおし作業 |
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丸の伏直し作業 |
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一度、風切り丸を全て撤去し、工事しなおしました。割れた素丸は交換してあります。
施工前の風切り丸
画像の様に屋根の左右両端部に半円形の断面をした役物(丸と言います)を並べた部分を「風切り丸」と言います。
この物置きが立てられた時期には風切り丸は固定する為に泥を用いて施工されていました。
泥は風にさらされて脆くなるため、次第に動いてしまいます。その結果、写真の様な状態になってしまいます。
この状態を放置しても雨漏りするかと言えば、大掛かりな雨漏りはしないと思いますが、長い目で見た場合、屋根下地が徐々に腐食してしまうことになります。
雨漏りしていなくても修理が必要な場合があり、今回は良い例だと思います。
施工後の風切り丸
昔の施工で用いられた泥。現代工法では使われていません。
現在では石灰やシリコンを配合して作られた「南蛮漆喰」という材料が用いられています。
このため、風雨にさらされて徐々に風切り丸が動かされてゆくこともなく、地震による振動にも十分に耐えることができます。
Tips 風切り丸の役割1 |
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屋根の大きさは「間取り」や外壁から破風板までの「出寸法」などによって、お住まいごとに異なります。 更に軒先部分よりも、棟部分の方が屋根の横幅が長い場合があり、瓦の横幅を調整しながら工事してゆきます。 この時に風切り丸の部分で他の列よりも多めに調節することが可能です 瓦の横寸法はある程程度の調整が可能ですが、過度に調整すると雨漏りの原因になるので、風切り丸を引くことで、この調整が容易になります。 |
屋根を一回り見て点検しました。瓦のずれ等を直して部分的に葺き替えました。
ズレた瓦を葺きなおして横のとおりをまっすぐにしました
土葺きの瓦は現代工法の様に「引っ掛け(断面が18mm四方の木材)」に瓦が固定されているわけではないので、左右や軒先方向にずれが生じやすくなっています。
瓦は多く重なりすぎても、重なりが少なくなっても雨漏りの原因になります。
そこで、縦横の重なりを適正にし、縦のとおりを真直ぐに戻して葺きなおすことでこの心配を解消しておきます。
葺き替える前の屋根瓦 |
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葺き替えた後の屋根瓦 |
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Tips 桟瓦の施工方法の移り変わり |
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関東大震災前は「土葺き」工法が主流でした。 当然、施工後時間が経過するとともに瓦が下方向や左右に動き出してしまいます。 関東大震災でこの問題が大きく注目されて、屋根下地に取り付けた瓦桟に桟瓦を固定する「引掛け桟」工法に移行して行きました。 東海地方や関西では関東大震災のような大きな地震は発生しなかったため、最近まで土葺き工法が多く用いられていました。地域によっても工法が異なり、地域の特性があります。 |
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 平葺き
- 割れて散乱した状態にあった瓦を全て差し替え、土葺きでズレた部分を葺き替えました。
崩れてしまった風切り丸を全て撤去した後、施工し直しました。
- 棟
- 崩れてしまった鬼の取り付け部分を修復するとともに、丸を並べ直し、剥がれた漆喰を塗りなおしました。
- その他
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 1日間
- 費用
- 5~10万