工事内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
隅棟からの雨漏りを修理
既存の棟をすべて撤去し、新たに棟を積み替えて雨漏りを止めました
深谷市 S様
原因は棟の瓦と桟瓦が接しているため、漆喰の劣化部分から雨水が侵入していました。
屋根下地と瓦桟も交換しました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1しばらく雨漏りしていたので、半ば諦めていました
天井にできたシミの様子から、雨漏りが始まってからかなり時間が経過している状態と見受けました。原因もよくわからなかったので、半ばあきらめておられるようでしたが、意を決して私たちにご連絡いただいたようです。
2今後のこともあるので、同様の雨漏りの原因が無くなるように修理してほしい
S様もお住まいは寄棟の屋根。切妻屋根の場合は漆喰の老朽化による雨漏りは殆どありません。ですが、寄棟の場合は時として漆喰の老朽化による雨漏りがあり得ます。詳細は下段の記事に委ねますが、対策として老朽化部分の漆喰を塗り替えることとしました。
3ご発注いただけた決め手
以前も同じ敷地内にある娘さん夫婦のお住まいの棟を積み替えさせていただきましたが、それがご縁で、今回の修理も私たちに仕事をご依頼いただきました。
隅棟のお住まいで雨漏りする原因と場所。今回はよくあるケースですので、メカニズムと対策を簡単に説明します。
積み替える前の隅棟です

赤丸で囲んだ場所が雨漏りの原因箇所。棟の瓦と桟瓦が接しています。
このため、より高い部分から棟の瓦を伝ってきた雨水が、ここで桟瓦から漆喰に向かって流れ込みます。
ここで、漆喰に劣化した場所があると、屋根下地から室内へと雨水が侵入して雨漏りを引き起こします。
寄棟づくりのお住まいでは、棟の瓦と桟瓦が接触しないように棟を若干高くとることが大事です。
雨漏りしている場所です

漆喰の劣化で雨漏り。更にこれに追い打ちをかけるようは原因があります。
画像のオレンジ色の部分に隅棟があり、本来雨水は左上と左下に向かって瓦の上を排水されてゆきます(青い矢印)。
ここで赤色の枠で囲った部分のある、半端の瓦の形が問題になります。赤い枠で囲んだ部分は本来不必要なものとして切断しておかなければならない部分です。
この部分が残してあるために、棟の瓦から桟瓦へと伝わった雨水が緑色の矢印方向に向かって、隅棟のあるオレンジ色の部分まで伝わってしまいます。
この部分が切除してあれば、オレンジ色の隅棟部分まで伝わらずに桟瓦から左上の青い矢印方向に排水されてゆくのです。
雨漏りしている場所の下地の状態です

前の写真とは別方向から撮影しています。青い矢印が雨水が排水されてゆく方向です。
赤丸部分で雨漏りが発生しています。数日前に降った雨がまだ乾かずに濡れている部分がはっきりとわかります。
下地材に穴は開いていなかったのですが、瓦桟は赤丸部分で腐った状態になっていたので、両方とも交換する判断をしました。
棟を積み替えます。使う材料等も時代の流れとともに地震や台風の対策が施されています。
桟瓦の半端を入れなおします

オレンジ色が隅棟です。この線に沿ってまっすぐに半端を入れることも大事です。
隅棟を挟んで2つの屋根の面が存在しますが、どちか一方の屋根の半端が大きいともう一方の屋根の半端は本来の大きさよりも小さくなります。
両方の屋根の半端が隅の真上でカットしてあれば瓦を切断した線がまっすぐに見えることになります。見た目にもきれいですし、雨漏り対策としてもこれが一番大事です。
隅棟の一番下の段を積みます

隅棟をまっすぐ、かつ、平らに積みます。下がっている部分は一方で勾配が早く、一方で勾配が遅くなっていることになります。勾配が遅い方は当然、雨漏りの危険が高くなります。
棟の瓦と棟の瓦の接続部分は雨漏りの危険が高くなる部分です。そこで、シーリング処理を施しておきます。こうすることで棟の瓦が一段全て一体化することにもなるので、耐震、耐風の両面で効果を発揮します。
一枚物の瓦を使ったように見えれば合格です。
2段目以降の棟を積みます
2段目以降の棟を積む際、1段目と同じく漆喰を使っています。こうすることで1番下の段と一体化して強度を増すものと考えています。
棟の一番上の段には「丸」という役物を使用します。文字どおり断面形状が半円形になっています。
この役物もシリコンで張り付けて(3番目の画像。灰色の丸い点が塗布したシリコン)台風などの強風に耐えられるように対策を施しています。



今回の隅棟からの雨漏りは漆喰の劣化が1つの要因。全ての棟で漆喰の劣化部分を補強しました。
漆喰の塗り方にも雨漏り対策があります
最初の画像が既存の漆喰の状態。赤丸部分に飛び出した漆喰が見えています。
漆喰が棟の瓦から飛び出していることが雨漏りの原因になる理由は、本来なら棟の瓦から排水されたはずの雨水を瓦の外にはみ出した漆喰が拾いこんで、漆喰の中に引き込んでしまうからです。
特に大雨の時などはこの状態がずっと続くことになるので、大量に雨漏りすることになります。
この場合は棟の反対側から雨が降った場合は、飛び出した漆喰が雨を拾いこむことはないと思われますので、風の向きによって雨漏りする場合は漆喰が原因のケースが多いです。



工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 棟
- 雨漏りしていた棟は既存の棟を全て撤去した後、新しく積み替えました。
その他の棟は劣化した漆喰を塗りなおして同様の雨漏りの防止に努めました。
- 平葺き
- 積み替えた棟の半端は全て適正な形状および大きさにそろえて、隅棟と平行にまっすぐ入れなおしました。
- その他
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 5日間
- 費用
- 15~20万