リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
土葺きの瓦は釘止めできません
長年の間に瓦の重なりが少なくなり、雨漏りしてしまいました
深谷市 浅間神社様
浅間神社様の屋根では、釘止めできない土葺きの瓦を針金で吊ってある部分がありました。
吊ってある部分の瓦は動きませんが、そうでない部分の瓦は年々下にずれて行きますから、瓦の重なりが少なくなる一方の場所ができてしまい雨漏りすることになってしまいました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1雨漏りを止めて欲しい
雨漏りは拝殿の内部で発生しているのですが、使用頻度があまり高くない為、実際に雨漏りに遭遇したことはないそうです。
しかしながら、天井にシミが出来ており張り替ええるようになってしまうと大きな修理費用が掛かってしまうことをご心配しておられました。
2瓦の並びを真直ぐにしてほしい
瓦の通りが曲がっていることは瓦が下にズレてしまったことと密接に関連しています。
瓦の並びを真直ぐにすることで雨漏りの原因となっている瓦の重なりが少ない場所の発生を、かなりの部分解消することが可能です。
工事完了後の屋根です
雨漏り箇所は複数ありましたが、下の2枚は主な修理箇所の画像の中から選別して掲載しました。
ズレ下がってしまった瓦を元どおりに近い状態に戻し、横から見て瓦が真っすぐに近い状態で並ぶようになりました。
- 修理前の土葺き瓦の屋根
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赤丸の中心付近の瓦が大きくズレ下がっていて、雨漏りしている個所と一致しています。
この状態を解消すべく修理に取り組みます。
- 修理後の土葺き瓦の屋根
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大きくズレて下がっていた瓦を元の位置に戻し、瓦の重なり量を均等にしました。
横から見た瓦の並びが真っすぐになりました。
神社の屋根の修理箇所その1。 土葺きの場合、瓦と一緒に泥もズレているので、両方をの状態に戻しながら修理作業を進めます。
修理の対象となる瓦を特定します
ここでは赤丸の瓦を並べ直します。
同じ段の他の瓦と比較してみてズレ下がっていることがよくわかります。
殆どの場合、瓦と一緒に泥もズレ下がっているため、このままでは修理作業が上手く行きません。
そこで、瓦をめくって泥の状態を確認する必要があります。
対象となる瓦の下地の泥の状態を確認します
予想どおり、下地となる泥が下にズレてしまい赤丸部分は泥がありません。
本来ならば下地の泥は瓦の列ごとに軒先部分から一番上の棟の部分まで1本に繋がっているはずですが、泥が瓦と一緒に下にズレ下がってしまい泥が無い部分ができてしまいました。
下地の泥が無いところの瓦は勾配が緩やかになるので雨漏りしやすくなります。
ズレてしまった部分の泥を補充して瓦の勾配を戻します
あるはずのものが無くなってしまったので、補充することで元の状態に戻す。これがこの作業の目的です。
補充した泥の分だけ勾配が付いたので、雨漏りしずらくなります。
周囲の瓦と同様の勾配を付けることを1つの目安にしています。
隣り合った瓦の並びを整えます。周囲の瓦も同様の作業を繰り返します
瓦の重なりも同様になり縦横がきれいに並びました。
重なりが極端に少ない瓦は雨漏りしやすくなりますので、全ての瓦の重なりが同じになることが理想です。
詳しい説明は省略しますが、瓦の縦の並びを真っすぐにしておくことも瓦の重なりを同じにする大事な要素の一つです。
神社の屋根の修理箇所その2。通常は雨漏りの原因にはなりにくいのですが、神社の屋根ならではの雨漏りでした。
屋根の雨漏り場所と雨漏りの原因
拝殿の雨漏り場所の真上が画像です。
屋根の一番上の棟を大棟。大棟に直行して軒先に向かって積んである棟を下り棟と言います。
そして下り棟と大棟が交差する場所が雨漏り場所であると判明しました。
青丸部分に降った雨が赤丸部分に侵入して、屋根下地を伝わり天井まで達していました。
抜本的な解決策はこの下り棟を積み替えることでしたが、他の部分の状況も鑑みて簡易な対策で雨漏りを防止することになりました。
屋根の雨漏り防止の対策
本来、下り棟の場所は屋根に降った雨が流れる場所ですが、入母屋屋根ではデザイン上の観点から棟を積んでいます。
従って、下り棟を積む際には棟の下に瓦の小片を敷き詰めて棟内部に侵入した雨水を流すようにして雨漏りを防止するのですが、時代によってはこうした対策がなされていない場合があります。
既述のとおり下り棟を積み替えることがベストですが、今回は雨漏り箇所が特定していることから該当場所からの雨水の侵入を防ぐべく漆喰で隙間を補修することとしました。
下り棟の雨漏り防止対策
画像は下り棟を積む前に鬼を付けた状態の画像です。
赤丸は雨漏り対策で敷き詰めた瓦の小片の1つで、周囲にも同様の瓦の小片が存在します。
こうしておくことで仮に棟内部に雨水が侵入しても、軒先に向かって瓦の小片の下を雨水が流れて行きます。
神社の屋根の修理箇所その3。軒先付近の瓦がズレ下がって、メクレ上がってしまいました。
修理前の屋根瓦の状況
赤丸と青丸を記した瓦がメクレあがってしまった瓦です。
赤丸を記した瓦は特に大きくメクレ上がって軒先側が持ち上がってしまい、上から流れてきた雨水が瓦の下に流れ込んでしまうような格好になっています。
幸いにもこの場所は下に部屋がないので、室内に雨漏りすることはありませんが、このままでは屋根下地を腐らせてしまいます。
部分的な葺き替えの為に瓦を一度撤去します
並べ替えただけではこの状況を改善することが難しいと判断したため一度瓦を撤去するとともに泥も新しく置き換えて葺き替えることとしました。
幸いにも下地が腐っていなかったため、下地の木材を交換することなく瓦を葺き替えるだけで修理が完了しました。
修理箇所の葺き替えが完了しました
並べ替えただけではこの状況を改善することが難しいと判断したため一度瓦を撤去するとともに泥も新しく置き換えて葺き替えることとしました。
幸いにも下地が腐っていなかったため、下地の木材を交換することなく瓦を葺き替えるだけで修理が完了しました。
神社の屋根の修理箇所その4。下り棟の鬼がズレて下がった為に隙間ができてしまいました。
鬼が軒先側に下がってしまいました
神社やお寺の屋根は勾配が急なので、棟自体が軒先側に向かって下がって来る大きな力が働きます。
この力を支える役割をするのが下り棟先端に付いている鬼で、屋根下地に釘止めした銅線などで固定してあります。
しかしながら、長年にわたって重みが掛かり続けるので銅線が伸びたり縛り口が緩んだりして鬼が軒先方向にずれ易くなります。
下り棟の必要箇所を解体します
必要部分の瓦と泥を撤去してみたところ、鬼を固定している銅線は全く問題ない状態でしたので、既存の銅線を活用して鬼を固定しなおすことにしました。
この時下り棟自体が若干曲線を描いて軒先方向に行くに従って勾配が緩やかになるので、鬼も若干上向き加減につけるとバランスが良くなります。
鬼の付替え修理が完成しました
下り棟と鬼の間に空いていた隙間がなくなり、綺麗にきれいになりました。
ここにできた隙間自体は雨漏り等を引き起こすことはありませんが、長年の間に棟の中で使われている泥が雨水で溶けだしたりすると、棟が崩れやすくなります。
そこで、先手を打って修理しておきました。
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 棟
- 雨漏りしている部分の修理と鬼を付け替える際に必要箇所を積み替えました。
- 平葺き
- 向拝が付いている面の屋根を全面にわたって並びを直し、瓦の重なり幅を均等にするとともに、縦の並びを真っすぐにしました。
- 鬼
- 下り棟と下り棟の鬼の間にできた隙間を解消して付け直しました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 6日間