リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
トタン屋根から瓦屋根に葺替え
10年ごとのペンキ塗り替えの負担が大きくなってしまいました。
深谷市 稲荷神社様
瓦屋根に葺き替える前はトタン屋根でした。
竣工時には予算面などからトタン屋根のご選択をなさったのですが、竣工後は逆に、10年ごとの塗装し直しがご負担になったとのことでした。
こちらの稲荷神社は個人様のご所有ですので、屋根の塗装さえなければ外壁などはご自分でペンキ塗り替えが可能とのご判断です。
今回の葺き替えのポイント
お客様はこの様にお考えでした
1せっかくのトタン屋根から瓦屋根への葺き替えなので、長持ちする屋根にしたい
幸いにもお客様がご所有の稲荷神社は切妻屋根ですので傷みやすい場所もなく、修理の必要がないようにシンプルな屋根にすることで、ご要望にお応えできると思います。
葺き替え完了後の稲荷神社の瓦屋根です
見えないところにも長持ちのための工夫が凝らされた丈夫な屋根になりました。

日本瓦の場合、切妻屋根でシンプルな屋根は一見簡単そうに見えますが葺き手にとって最も難しい仕事になります。
屋根全体を一目で見渡せてしまうため、仕事の出来が一目瞭然だからです。
平らな屋根をまっ平に仕上げられるように、そして丈夫な屋根になるように頑張りました。
稲荷神社の葺き替え修理:まずは「面戸」を取り付けます。 「面戸」は雀などの鳥が屋根に侵入し、異物を異物を持ち込むことを防ぎます。
瓦屋根の左右両端部の雀対策

面戸とは雀などの鳥の侵入を防ぐべく建物の隙間を塞ぐものを指す言葉です。
画像では赤丸を付けた部材が面戸です。
左右両端部の瓦は外側が屋根面に対して90度に折れ曲がっています。
画像のように面戸を、この折れ曲がった部分にピッタリ接して付けることで雀などの鳥の侵入を防ぐことができます。
瓦屋根の軒先部分の雀対策

もう1か所雀などの鳥が侵入可能な場所は軒先です。
屋根下地は平らであるのに対して、軒先部分の瓦は円弧を描いています。
この隙間を塞ぐ為に面戸を取り付けます。
画像では赤丸を付けた部分が面戸で瓦と屋根下地の隙間と同じ形をしていて、瓦と面戸がピッタリと接します。
稲荷神社の葺き替え修理:ケラバの施工 左右両端部に用いる役物の瓦である「ケラバ」は風対策も含めて強化施工が必要です。
瓦屋根の端部の瓦の固定方法
瓦の固定は釘と針金を使って行います

針金による固定
屋根下地に釘止めした針金で瓦を緊結します。赤丸は屋根下地に釘止めした2本の針金を、瓦に開けてある2つの穴に通した状態です。
この後2本の針金を縛って瓦を緊結します。
オレンジ色の丸は次の瓦を緊結する為に屋根下地に釘止めした針金です。
釘による固定
緑色の矢印は釘止めした釘の位置を表します。釘穴は複数開いていますが、できるだけ外側の釘穴を使って、風で飛ばされないように固定します。
泥による固定
青丸は瓦を固定する為に使う泥で、次に使う瓦が上に重なってくるため、この泥は2枚の瓦に挟まれる状態になります。瓦同士で接した面は摩擦係数が低く、動きやすい状態です。そこで、端部に泥を挟んで摩擦係数を増やし、瓦が動かないようにしておきます。
ケラバの仕上がり

屋根両端部の瓦をケラバと言います。ケラバは外側が屋根下地に対して90度に折れ下がって板状になっていて、破風板に風雨がかかるのを防いでいます(青丸を付けた瓦)。
ケラバは屋根下地(赤線で示した部分)と平行に真直ぐに付けると、きれいに見えます。
ただ、修理の際には屋根下地が平らではない場合が多いので、屋根下地の一番下と一番上を結んだ線を基準に平らに付けることを心がけています。
稲荷神社の葺き替え修理:棟を積みます。 丈夫な棟になるように、棟瓦は全て針金で緊結してあります。
瓦屋根の棟の一番下の段を積みます

棟瓦は向かい合う2枚の瓦が一対になっていて、それぞれに針金を通す穴が開いています。
この穴に通した針金で向かい合った2枚の棟瓦を緊結して棟の強度を向上させます(赤丸部分)。
隣り合った合った2枚の棟瓦はシーリング処理して接着しますので、向かい合う棟瓦同士、隣合う棟瓦同士が一体化することになります。
瓦屋根の棟の3段目の段が積み終わりました

全ての棟瓦を針金で緊結するので、針金が多数出ています。
赤丸で囲んだ針金は向かい合う棟瓦を緊結する為の針金、青丸で囲んだ針金は一番上の棟瓦である丸(断面形状が半円形をしていることからこの呼び名があります)を緊結する為の針金です。
丸は棟の一番上に乗る瓦なので、下の方の段の棟瓦から針金を出して、強い風でも飛ばされない工夫をしてあります。
棟瓦を平らに積むこと

一枚の板を置いたように見えますが、棟瓦を真直ぐに、そして平らに積んでいるので、そう見えます。
真直ぐに、かつ平らに積むことは雨漏り対策でもあります。
凸凹に積んだ場合は低くなった部分が、どうしても雨漏りしやすくなりますし、曲がって棟を積んだ場合は棟の下の瓦との重なりが一定ではなくなり、重なりが少なくなったところでは同じように雨漏りしやすくなります。
稲荷神社の葺き替え修理:棟が積み終わりました。 お寺仕様の棟の完成です。
瓦屋根の棟の一番上の瓦を積み終えました

棟の一番上に積んだ瓦を「丸」と言います。
丸には針金を通す穴が2本開いていて、下の段の棟瓦に緊結した2本の針金を伸ばしておくことで、下から丸を緊結することができます。
この方法で丸を緊結すると、屋根の下から見た時に棟瓦を縛った銅線が見えない為すっきりした仕上がりになりますが、下の段の棟瓦から針金を出しておかなければならないので手間がかかり、一般住宅では用いない方法です。主に神社やお寺で用いる施工方法です。
瓦屋根の棟が完成しました

全ての建物が曲線部分を有するわけではないのですが、神社やお寺の屋根の特徴は曲線部分があることが多いです。
今回の稲荷神社では、こうした曲線部分が無いので、棟の端部を少しだけ上げることにしました。
あまり上げすぎると全体のバランスを崩してしまうので、他の部分の造りと調和するように配慮しました。
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 平葺き
- 既存のトタン屋根をすべて撤去した後、葺き替えました。
- 棟
- 全ての棟瓦を針金で緊結し、丈夫な棟に仕上げました。
- 面戸
- 雀の侵入を防ぐ面戸を取り付けました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 2日間
- 費用
- 20~30万