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リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ
雨漏りしていた本堂の隅棟。
雪害等で弓なりになってしまいました。
深谷市 I様
勾配の早いお寺の本堂や神社の本殿、拝殿の屋根。本来雨漏りには強いはずですが、大雪の際にはそれが災いする結果となってしまいました。
一度棟瓦をすべて撤去し、南蛮漆喰を使って隅棟を積み替えました。
今回の工事のポイント
お客様はこの様にお考えでした
1ここ数年来雨漏りしていたので、雨漏りを止めてほしい
雨漏りの場所からして、隅棟から雨漏りしていることは間違いありません。ただし、今回は棟が全体的に弓なりになってしまっているので、既存の棟瓦を一度撤去して積み替える必要があります。
2雨漏りしている場所以外も修理が必要なところがあれば対処してほしい
今回の雨漏り修理をきっかけに、本堂の建て替えをご検討されるとのことで、それまでの期間屋根がもつように、直す必要があるところは修理で対応することとなりました。
工事完了後の上裏です
今回もとってもきれいに仕上がりました。
- 修理前の隅棟
非常に勾配が早い本堂なので、棟瓦自身の重みや、大雪などの影響で徐々に隅棟が上から押され、一番上の部分から弓なりになってしまいました。
- 修理後の隅棟
これが、本来の隅棟の姿です。
まっすぐ棟をとりなおしました。既存の隅棟を撤去する過程で雨漏りしていた場所も特定でき、対策も施しました。
お寺の本堂の雨漏りしている場所の見当をつけ、隅棟の撤去作業を始めました。 この段階で雨漏りしている原因をほぼ特定することができます。
隅棟が弓なりになってしまった原因

画像の中で赤い線で示したのは棟の中心線です。
途中から右に向かって大きく曲がっているのが解ります。これだけ雪害の影響などで弓なりになっているわけです。
もう一つ注意していただきたいのは棟の傾きです。
一番手前が鬼ですが、鬼の近辺と棟が右にカーブした後では棟の勾配が違います。
鬼の近辺では棟の中心線から左右が対象に同じような勾配で棟が積まれて、仮に棟の断面を見れば「富士山」のようになっていることと思います。
しかし、棟が右にカーブした後では「富士山」の勾配が大変緩やかになって、更に右に大きく傾いてしまっています。
この為、益々軒先に向かって隅棟が下がりやすくなっています。

棟瓦が左右対称に同じ勾配で積んであることで、「やじろべい」の様にバランスをとることで棟は同じ場所に居座り続けます。
ですから、棟の中心線から左右対称に勾配がが付いていいることはとても大事です。
Tips 雨漏りしていた場所の特定の仕方

こちらの本堂で雨漏りしていた場所は赤丸で囲んだ部分です。
ある程度の期間雨漏りしていた為、屋根の下地材である杉皮が腐ってしまいました。
このように、室内で大体の雨漏りの場所の検討を付けて修理に取り掛かりますが、最終的には瓦の撤去中に最終的な雨漏りの場所が分かります。
今回はある程度の年月が経過していた為に屋根下地が腐食していたことで確証がつかめましたが、雨水が流れていた跡が決め手になることもあります。
お寺の本堂の隅棟を積み替えます。雨漏り対策と棟が下がって弓なりに曲がらないようにする対策を織り交ぜて行きます。
雨漏り対策 : 入母屋屋根で雨水を流すためのトンネルを作ります

画像で赤丸で囲んだ瓦が「トンネル」の役割を果たします。
黄色く変色している部分は撤去前の隅棟が積んであった場所で、本来、上から流れてくる雨水が流れる場所であるため、この「トンネル」がないと雨水を堰き止めてしまい雨漏りしてしまいます。
今回このトンネルを交換したのは、これまで使ってあった「トンネル」が小さすぎたので、念のために大きいものと交換してしました。
この「トンネル」の上に隅棟を積みます。
隅棟の曲がり防止対策 : 棟を積む際の勾配を優先して棟を積みます。

画像は一番下の段を積み終えたところです。修理前の画像と比較して、まっすぐ積んであるのがよくわかります。
棟瓦の勾配も一番手前の鬼の近辺と一番上の部分で比べてみて、棟の中心線から左右対称に同じような勾配で積んであります。
この棟では、上の方は棟の中心線から右側のみが積んであります。
理由は、向かって左側を積んでしまうと棟の中心線から左右対称に同じような勾配で棟瓦を積むことができないからです。
この棟は5段ですが、2段目も向かって左側は積まず、左側はトータルで3段になっています。
棟上部の拡大写真を以下に掲載しておきます。
もう1本の隅棟も同じような状況です。ただし、屋根下地の仕上がりが先ほどの隅棟とは異なるため、違う納め方が必要でした。
もう1本の隅棟修理の問題点

問題の部分を赤丸で囲んで拡大表示しています。
通常は隅棟が、上から来る瓦(画像では隅棟の右側の瓦)の上に重なってゆくことで雨漏りを防ぎます。ですが、このケースの場合は全くの逆。隅棟の上に上から来る瓦が上に重なっています。
他の部分との兼ね合いでこの状態が解消できません。お寺の屋根の場合は屋根が複雑に組み合わせるような形になっているので、この状態を解消したのでは、他の部分でもっと無理をすることになるからです。
原因は隅棟の右側部分の屋根下地が高すぎることにあります。
瓦を葺く前の屋根下地を作る段階での問題点は、時として瓦を葺く段階では解決できないことがあります。
隅棟修理の問題点の解決策
横からの画像では、極力、隅棟に雨水が流れないように赤い矢印方向に雨水が流れる様に勾配を付け、さらに赤丸部分にはシーリング処理を施しました。
こうすることで、2重の雨漏り対策を施すことができました。
上からの画像では、上に重なる丸(断面形状が半円形であるため「丸」と言います)の下に南蛮漆喰を十分に下置きし、更に雨水が回り込みそうな赤丸部分にはシーリング処理を施しました。
ここでも、2重の雨漏り対策を施しました。
- 横から見た隅棟の納まり具合
- 上から見た隅棟の納まり具合
お寺や神社の屋根には特殊な瓦が使ってある場合があります。横幅の大きな大きな瓦を特注して修理しました。
既存の修理箇所の問題点 : 瓦の重なりがなくなってしまいました。
お寺の屋根は住宅とは異なる形、寸法の瓦が使ってある場合があります。
今回も横幅が通常よりも大きな桟瓦が使ってありました。
画像の部分の屋根は一度修理をしたことがあると考えられ、横幅の大きな瓦は通常在庫がないため、普通の大きさの瓦で代用して修理してしまったようです。
年月の経過とともに瓦が動いてしまったからでしょうか、拡大画像の様に瓦の重なりがなく、隙間が空いてしまったところができてしまいました。
- 桟瓦の並び
- 桟瓦の並び(拡大画像)
Tips 既存の修理で代用されていた幅の狭い瓦と今回特注した幅の広い瓦の比較

画像中、上の瓦が既存の修理部分で使われていた通常の桟瓦。下の瓦が今回特注した幅の広い桟瓦です。
ご参考までに通常の瓦は横幅265mmに対して、こちらの本堂の桟瓦は横幅280mmで15mmほどの差があります。
現在の瓦は、JIS規格で寸法等がきめ細かく規定されていますが、お寺や神社で使うような瓦は、この規定が全て適用されるわけではありませんので、特殊な瓦が使用されることが多いです。
既存の修理で使用されていた幅の狭い瓦を幅の広い瓦に交換して行きます。
今回ご紹介した場所は、この一角だけ全て瓦を撤去し、瓦桟を打ち換えて屋根下地を作りなおすことにしました。
こうすることで、瓦が動くことはなくなりますので新築時点と全く同様の状態になります。
色の良いところが今回新たに使った瓦です。
この場所以外では、瓦の重なりが無くなって隙間が空いてしまった場所はありませんが、幅の狭い瓦で代用して修理してあった場所は他にもありましたので、全て幅の広い新しい瓦に差し替えました。
また、今回は若干余分に瓦を発注しましたので、余った瓦は次回の修理用にこちらのお寺さんに在庫として保管しておいていただくこととしました。
- 瓦桟の打ち替え
- 葺き替え後の桟瓦
- その他の葺き替え箇所
工期、予算(費用・価格)等のまとめ
工事の内容
- 平葺き
- これまでの修理で幅の狭い桟瓦で代用してあった場所は、全て新しい幅の広い瓦に交換しました。
並びの悪いところは新たに葺き替えました。
- 棟
- 軒先側に大きく曲がった棟を真直ぐに積み替えました。
雨漏りしていた部分も対処しました。
- 木工事
- 一部の瓦桟を打ち換えるとともに屋根下地の板も交換しました。
工期、工事費用等の内容
- 工期
- 5日間
- 費用
- 30~50万